救いの手を差し伸べて










     政略結婚。そんなものは昔の話だと思っていた。

     昔のドス黒い社会の中に存在するものだと思っていた。

     まさか家が・・・いや、自分がそんなものの為に利用されるなんて・・・

     今まで考えたことなどあっただろうか?

     そうでなくとも "イイ子のお人形ゴッコ" には飽き飽きしているというのに・・・。

     もう誰も信じたくない、信じられない。





     その話を聞いたのは本当に突然だった。

     食事の後、父から放たれた言葉が今も胸に刺さって抜けない。

     母もあまりイイ顔はしていなかった。

     そして私は呆気にとられて言葉も出ない状態。





        『もうお前しかダメなんだよ。 "ウチ" の会社を救う為には。』





     そんなコト言われても、私の知ったこっちゃ無い。

     父の会社が潰れようが潰れまいが・・・。

     生活が変わったって別にそれはそれでいい。

     自由になれるチャンスなのかもしれないから。





        『見合いの日取りはもう決まっている。しっかり頼んだからな。』





     知るか、そんなこと・・・。

     所詮私はこの家の飾り、ただ何でも言うことを聞くお人形。

     そうでないと生きていけないから大人しくこうしている。

     しかしもうウンザリだ。





     確かに育ててもらったことには感謝している。

     でも父から愛情を注いでもらったコトなど、

     私の記憶の中には全くと言ってイイほど残っていない。

     そんな奴を親と呼べるのか?呼べるはずが無い。

     外で何してるか分からない、ただのオヤジだ。





        『あの・・・私はまだ18歳なのですが・・・。』



        『結婚は十分できる年齢だろう?何か問題でもあるのか?』



        『・・・学校の方はどうするのですか?』



        『嫁ぎ先から通えばいいだろう。学費などは今まで通りウチから出す。』



        『はぁ・・・。』





     それだけ言うと父は姿を消した。

     私も気分が悪いと行って部屋へ切り上げる。

     するとデスクの上には既に見合いの日程、時間などが書かれた紙が置いてあり、

     部屋の隅にはその当日着て行かされるであろう着物がかけられていた。





        『 ・・・・・・はぁ・・・・・・。 』





     逃げ出したい。

     そう思ってももはや叶わぬこと。

     もうため息をつくコトしか出来なかった。





     そして着々と決められた日が近づき、私の心も塞がっていく。










     完07.03.07 更07.03.09





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